海外富裕層に人気の温泉旅館、顧客満足度の鍵は「富裕層の因数分解」

日本を訪れる中国人富裕層観光客に人気が高い「温泉旅館」。彼らにとって温泉旅館への宿泊は、その全てが日本文化の体験になるというのが大きな理由だ。女将さんや仲居さんによる出迎えや、玄関で靴を脱ぐことなどが、新鮮で面白く感じるという。

もちろん、不満がないわけではない。たとえば、中国で日本のライフスタイルや旅行に特化した雑誌『行楽』を発行する袁静氏は、「日本の旅館は安すぎる。日本には1泊10万円くらいする温泉旅館が少ない」と不満を漏らす。これは、中国では「値段の高い店=いい店」という認識があり、かつ日本では騙されるリスクが低いため、1泊10万円の温泉旅館は、中国人富裕層にとっては10万円分のラグジュアリーサービスが受けられるとして魅力的に映るからだ。

また、雑誌『行楽』がきっかけで人気なのが、金沢の「金箔のかがやきソフトクリーム」だ。ソフトクリームの上に10センチ四方の金箔を貼ったもので、いわゆるインスタ映えするものとして注目を集めている。一方、同じ金箔を使った「金箔入りのお酒」に対して、ある中国人女性富裕層は「私はこういうものは好まない。ステレオタイプで中国人を見ないでほしい」と口にする。

特に海外富裕層を対象とした富裕層リサーチの依頼を受ける際、当社でも同様のことを重要なポイントとして挙げている。当社では「因数分解」と呼んでいるが、つまり「その国(中国など)の富裕層と言っても、実際には様々な人がいる」という当たり前の視点のことだ。

温泉旅館を訪れる目的も、日本文化を堪能したい人もいれば、いわゆるジャパニーズスパという感覚で温泉そのものを楽しみたい人もいる。高い料金を払っても構わないからよりラグジュアリーなサービスを求める人もいれば、値段に関係なく老舗旅館の伝統的なサービスを求めるひともいる。

当然といえば当然だが、「中国人富裕層」のようにひとつの枠組みと捉えてしまうと、前述のようなミスマッチが起きてしまう。よく「うちの旅館は富裕層をターゲットにするにはまだまだ」というような意見を聞くことがあるが、「因数分解」の視点で考えると多くの温泉旅館が海外富裕層にPRできるものを持っている、ただそのことに気がついていないだけだと感じることが少なくない。

 

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